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株式会社EMSS(つむぐ家・Ricono)

会員の種類
正会員
主な業種
工務店
本社
  • 〒599-8121
    大阪府堺市東区高松323番地
  • Tel. 0120-03-2701
主要な営業エリア
大阪府(大阪市以外)
モデルハウス
なし
WEBサイト
https://e-emss.com/
得意分野
デザイン住宅 モダン ナチュラル 耐震性能 断熱性能 長期優良住宅 建築家 国産材 ZEHビルダー 土地

INTERVIEW インタビュー

取材:2023年4月25日

※本文中の情報はすべて取材当時のものです

代表取締役 田中 健一社長

御社の略歴を教えてください。

昭和45年に創業者が阪昭工務店として設立した会社で、2023年で53年目を迎えました。平成元年に創業者の息子である前社長が法人化し、平成20年に社名を株式会社EMSS に変更、平成30 年に私が代表に就任しました。

田中社長は三代目とのことですが、創業者のご一族では…

…ないんです。私は18歳の頃に当時の阪昭工務店でアルバイトをしたのがきっかけで入社しました。当時としては珍しくCADで図面を書いている会社だと知り、もともと建築の知識はまったくなかったのですが、パソコンが好きで興味を持ちました。ところが毎日仕事をしてみると、思ってた以上にすごく楽しかったんです。

何もわからないままお客さんのところに連れて行かれて、打ち合わせに参加して、図面を描いて、そのとおりに家ができあがる…。そしてお客さんが喜んでくれるというのが何よりも嬉しかったですね。大学1回生の夏休みから働き始めたのですが、仕事に夢中になってしまって、2年ほど休学した後に退学して、20歳の時にそのままこの会社に入りました。今思えば正しい選択だったのかわかりませんが、後悔はしてないですね。

株式会社EMSSになってから事業内容に変化はありましたか?

創業以来、当社は注文住宅とリノベーションやリフォームを同じぐらいの比率でやってきました。しかし、「何でもできる」=「結局何もできない」と言われてしまうリスクがあります。そこで、新築注文住宅事業は「つむぐ家」、リノベーション事業は「Ricono」として、主要事業をそれぞれブランド化して見え方を変えました。

SE構法を使った家づくりをされているそうですが、全棟SE構法ですか?

はい、現在は全棟でSE構法を標準化しています。SE構法は耐震性の根拠が科学的に証明されているので、建てた後も安心なんです。ただ、最初からSE構法で一本化したわけではなく、選択制にしていた時期もありました。しかし、選択制にすると皆さんどうしても安い方を選んでしまう。せっかく良い技術があるのに、これではダメだと思い、意を決してSE構法のみに切り替えました。

御社ならではの強みは何ですか?

最近、新築とリノベーションで悩まれているお客様が増えているのですが、EMSSはどちらもできるので、初めからどちらかに決めるのではなく、並行して検討していきましょうと言えるのが強みです。また不動産の事業も始めたので、様々な可能性に寄り添うことができます。

御社には一級建築士の方がたくさんいらっしゃいますね。

そうなんです。現在一級建築士は6名在籍しています。私も元々何も資格がないところから始めて、働きながら勉強して資格を取ったので、会社として資格の取りやすい環境を整備したり、資格を取るための費用もある程度会社が負担したりしています。資格が取れた場合には資格手当もつけているので、皆前向きに仕事にも勉強にも取り組んでくれています。

やはり日々の仕事を淡々とこなすだけではなかなか満足度って生まれないですよね。でも自分にスキルがつくと自信がつくし、それがお客様にも伝わって良い循環になると思うんです。

一級建築士がいることの影響は?

あくまでも営業マンではなく建築士なので、お客様の質問に対する回答が他社さんとは全く違うということをよく言われます。建築の細かい知識があるので根拠もはっきりしていて、より説得力がありご納得いただけるのだと思います。

詳細な構造計算がされたSE構法

全棟で気密性能を実測検査

環境と家のあり方について意識されてることは?

最近は性能の数値の話をよく聞きますが、そこが目的ではないと思うんですよね。やはり実際に家ができた後いかに心地よく快適に住んでもらうか、ということがゴールだと思っています。そのためには住み始めてからお金がかかるような家ではダメで、ランニングコストを抑えることにかなりこだわっています。そのひとつとが「エネルギーを無駄にしない家」です。

エネルギーを無駄にしない家、とは

いま電気代がものすごく上がっていますが、これはそもそも今の暮らしにはエネルギーがたくさん必要だからなんです。それほどエネルギーを使わずに家を暖かくできたら、電気代が上がっても影響なく快適に過ごせる。そういう家を増やしていかないといけないと思っています。そのためにはこれだけの性能が必要なんです、という話にようやく繋がってきます。そこからお客様に合った性能についてのシミュレーションをして、理想の家づくりが始まります。

実際に数値を計測しているそうですね。

はい。法律上は設計段階の論理値さえあれば実測値は必要はありません。しかし当社では気密性能に関しては全棟できちんと実測しています。以前は外部の業者さんに計測を依頼していたのですが、どうせなら自分たちで技術を身に着けて責任を持って数値を証明したいと考え、専用の機械を購入して自社で計測できるようになりました。

実際に計測してみると、どうやって熱を逃さないようにするかという問題に実感を持って向き合うことができますし、自ずと建築の技術力も上がります。また、自分たちのやっていることを自らきちんと裏付けることで、一棟一棟に対しての意識や責任感も大きく変わってきます。

実例:光感じる大空間 連続大開口のリビングのある家

実例:和みと流れ 四季折々の表情を楽しむ和のお家

お客様との対話の中で大切にしていることはありますか?

当社では、まず初めに「住まい講座」という講座を受けていただきます。皆さん、まだどの会社で建てるか迷っている段階なので、どこで建てるにしても環境やエネルギーのことについてしっかり考えることが大切ですよ、というお話を3時間ほどします。当社についての説明はその後です。

自社のアピールが後回しというのは珍しいですね。

むしろ「エネルギーとかもう別にいいわ!」「性能よりコスト重視!」と思っているような人は、私たちと価値観が違うので、それ以上話を進めてもお互いに時間を無駄に使ってしまうことになります。お客様と同様に私たちにも「良い家にしたい」という強い気持ちがあるので、双方が納得できる家づくりが理想ですからね。私たちの建築に対する想いや考えをたっぷり3時間聞いていただいた上で、次のステップに進んでほしいんです。

価値観のすり合わせのための時間ですね。

そうですね。
例えば私はキャンプが趣味で、よくキャンプ地できれいな風景の写真を撮るのですが、「景色がきれい」ってどういうこと?というお話を講座でしています。哲学的な話に聞こえるかもしれませんが、現実問題として良い景色を見ているときの私たちの皮膚の感覚とか、そういう肌と感覚の関係を意識することが重要なんです。

炎天下のなか肌が不快な状態では景色を美しいと思う余裕も生まれないですよね。自然が豊かな場所では、大きな空があり、木の陰で涼むことができ、土が熱を吸収して夜を快適にしてくれるからこそ心地がいい。五感にストレスがない状態でないとそのような感覚にならないんです。芸術とか景色を「美しい」と思うその心の隙間を作るために、私たちは良い空間を設計しようと心がけています。

まず価値観の共有、そして性能なんですね。

いきなり性能の話をしても、なぜ私たちがそれにこだわっているかまで伝わらないと思うんです。だからこそ価値観の共有を優先したいと思っています。

建材も自然素材にもこだわっているそうですね。

はい。例えばメンテナンスで壁紙を剥がすという行為はゴミを出すということなんです。ビニールクロスは簡単に剥がせますが、完全にリサイクルできないという問題があります。未来にゴミを増やさないという考えでできたドイツの「オガファーザー」という壁紙があって、これは剥がさなくていいんです。木のチップの入った紙を貼り、そこに塗装するという手法で、この塗装も人が舐められるくらい無害な塗料を使っているので安全です。メンテナンスするときは塗料を上から重ね塗りするだけでいいので全くゴミが出ません。当社の「つむぐ家」でもこの「オガファーザー」を取り入れて標準仕様にしています。

その分金額は上がりますよね?

はい、ただし張り替える必要がないのでメンテナンス費用は抑えることができます。また、外壁についても普通なら数年ごとに塗装し直さなければいけないところを、つむぐ家のドイツ製の塗壁にすれば、性能が持続するので長期間塗装し直さなくても大丈夫。断熱性能も上がります。私たちは、実際の「暮らし」にこだわっているので、イニシャルコストが上がっても、それ以上にランニングコストが安くつき、生涯の総コストが安くなる住まいを提案しています。

持続可能な塗料、まさにSDGsに繋がるお話ですね。他にもSDGsを意識した取り組みはありますか?

当社の敷地でマルシェ・ド・ミミというイベントを春・秋2回開催しています。作家さんたちがSDGsをテーマにしたハンドメイド雑貨を販売するイベントです。当初は会社のことを知ってもらうきっかけづくりや、地域活性化への貢献のために始めたのですが、色々な作家さんたちに参加していただけるようになり、2023年で17回目を迎え、出店数も50を超えるほどに成長しました。

素晴らしい企画力ですね。さらに社内で雑誌も発刊されているそうで…。

スタッフ全員で色々な場所に行き、自ら体験したことを取材して、1冊の本にまとめています。私たちの価値観を表現をするための場がたくさん必要なんです。

最後に、近木協に求めることはありますか?

やはり自分たちだけではできないことを団体でやってほしいと思っています。私たちのような個々の工務店ではなかなか動かせないことを、団体の力があれば動かせることもありますよね。最近では日本の土地が海外の方にどんどん購入されているという問題がありますよ。建築に携わる者としては、そのような土地でも施工の依頼が来ればビジネスになるのですが、目先の利益よりも守るべきものがあるはずです。このような問題はやはり僕ら一人一人の力ではどうにもならなくて、条例を変えるために何かしら組織的な取り組みが必要になります。民間企業が集まった団体だからこそ、政治や法律を動かす力になって欲しいと思います。