三代目の山本雅史社長
御社の略歴を教えてください。
初代である私の祖父、山本安雄は元々大工をしておりまして、一人親方だったところ一念発起して昭和35年に個人事業として工務店を立ち上げました。その後、昭和48年に法人化し、平成10年に私の父が2代目として就任、1級建築士事務所を開設したりグループ会社のヤマヤスハウジングを設立したりと事業を拡大していきました。そして令和2年に3代目として私が就任し、現在に至ります。
小さい頃からいずれは家業を継ぐと決まっていたのですか?
決まっていたのかはわかりませんが、祖父の時代から私はこの事務所で遊んだり、時には現場へ連れて行ってもらったりしていて、小さい頃から会社が身近な存在でした。当時どう思っていたかははっきり覚えていませんが、そのような環境の中で少しずつ意識したところがあったと思います。
住宅以外にも、かなり幅広い事業を展開されているようですね。
現在は住宅関係が7〜8割で、残りの2〜3割は商業施設や工場などを手掛けています。他にも不動産や分譲事業、駐輪場やパーキングも運営しています。
設計事務所とのコラボによる印象的な建築
全国的に注文住宅の受注が低迷していますが、状況はいかがですか?
弊社はありがたいことに注文住宅も比較的安定しています。ただ、価格帯が上がってしまったので、低価格帯の受注が減り、その代わりに数は多くないものの高価格帯の受注が増え、全体としては相殺されている状態です。また社外の設計事務所と一緒に仕事をすることも多いので、そのご縁で建築家の先生方からご依頼いただくこともあります。
施工事例でも建築家の魅力的な家が目に止まりますね。
はい、複数の建築家とコラボレーションしています。先代から繋がりのある方もいますし、私の代で繋がった方もいます。こだわりの強いお客様には建築家による設計を、コストを抑えたいお客様には自社設計をお勧めするなど、予算やお客様の希望に合わせてご提案しています。
3種類の注文住宅のモデルプランがあると伺いました。
お客様にわかりやすいように、3つのプランでグレード分けしています。
『Anju(アンジュ)』は自社設計施工、『Li-bra(リーブラ)』は「atelier thu(アトリエスー)」という設計事務所による基本プランを用いて極力コストを下げながらもしっかりこだわりたい方向けのセミオーダータイプ、『Pazio(パージオ)』は建築家によるフルオーダーの設計で、施工はすべて弊社が請け負います。
施工事例を見ながら丁寧に説明をしていただきました
規格住宅というと他社のデザインをライセンス契約するケースが多い中で、自社ですべて企画されているのは珍しいですね。
ブランディングはすべて自社でやっています。まだ誕生して間もないブランドなので、常にブラッシュアップをしながら、最新の法律にも適合したものにしています。これから頑張って伸ばしていきたいですね。
御社だけの特別な秘密はありますか?
弊社では現場監督や設計士が、営業からアフターメンテナンスまでをお客様に寄り添ってトータルで担当しています。
自社に専属の職人がいるので、いつも同じメンバーで安定した家づくりができることも強みですね。「建てている人の顔が見えること」は、お施主様にとっても安心に繋がると思います。
また、不動産事業があり土地の提案からできるので、お客様のどんなご希望にも寄り添える総合力があると思います。木造だけでなく鉄骨やRCで住宅を手がけることもあるので幅広く対応できるのも強みです。
住宅業界は職人不足だけでなく、現場監督などの働き手不足も深刻です。どのような採用対策をされていますか?
対策のひとつとして学生さんのインターンシップを導入しています。年に2回ほど来てもらっていまして、その中で採用に至ったケースもあります。
最初は設計士を希望される方が多いのですが、現場に同行してもらって実際に家が建つ様子を見ると、現場監督に興味を示す方もけっこういます。体験して初めて知ることもたくさんあるので、入社前にインターンシップで色々肌で感じていただくのは良い取り組みだと思います。
ウッドデザイン賞や感謝状の数々
自社のトラックのミニカー
環境保護のために何か取り組まれていることはありますか?
Instagramなどで廃材を活用していただける方を募集しています。廃材を使ったモノづくりをしている学生さんが来てくれたり、OBのお客様がアウトドア用に引き取ってくれたりします。糊などがついていない木材は、キャンプで燃やすのにちょうどいいそうです。もともと捨てるはずだったものを、何かに活用していただけるのはとてもありがたいことです。
SDGsについても意識されていることはありますか?
63年続いている会社ですが(2023年10月時点)、弊社が建てた家は今まで一度も倒壊したことがありません。そういう意味では、SDGsの11番「住み続けられるまちづくりを」に貢献できているかなと思います。そもそも、長く住み継ぐための家を作るという仕事は、SDGsの「持続可能な暮らし」というコンセプトと共通していますね。
また、SDGs12番の「つくる責任、使う責任」に関しても、工務店とお施主様の関係に通ずるものがあります。工務店が良い家をつくれば、自ずとお客様もその家を大切に使ってくれると信じています。
創業以来、これまでに何棟建てられたのですか?
数えてないのでわかりませんが、お客様の数で言えばおそらく1万は超えていると思います。家を建てて終わりではなく、その後もメンテナンスやリフォームで長いお付き合いが続くので、ひとつひとつ責任感を持って関係を築いていきたいと思っています。
親子3代に渡って依頼してくださる方もいらっしゃいます。このような信頼関係は、弊社の先代、先先代が頑張って積み上げてきてくれたものなので、それを崩してはいけない、という強い気持ちを日々持っています。
今後の木造住宅はどうなると思いますか?
良いか悪いかは別として、ZEH住宅(ゼロ・エネルギー住宅)が普及していくと思います。お客様のご予算との兼ね合いもあるので、弊社ではまだ数棟しか実績がありませんが、ソーラーパネルも技術的に発展途上なところがあるので、様子を見ながらご提案しています。
国が普及を後押ししているわりには、今はまだ金額面の問題もあるし、法制度も整っていない印象がありますね。
近木協に入って良かったことはありますか?
日ごろ、他の工務店さんとの横の繋がりが少ないので、近木協のセミナーや交流会などを通して出会いが生まれるのは良い点ですね。今後も情報交換の場を設けていただけたら嬉しいです。