
一級建築士で社長の夫、純さん
もともと大工さん出身だそうですね。
大工として勤めていた工務店を退社してから、しばらくは一人親方として下請けの仕事をしていました。2022年には下請けも一切やめ、夫婦で独立して自分たちで家を建てることにしたんです。
職人として雇われているときは感覚だけで家を建てていましたが、いざゼロから家づくりをするとなると、圧倒的な知識不足を痛感して、勉強して一級建築士の資格を取得しました。
もともと勉強が得意だったんですか?
いえ、まったく…。
一応、建築の専門学校を出ているんですけど、学生時代は遊んでばかりで、建築士試験を受けるにあたってゼロから勉強を始めたようなものです。当時は、昼間は大工の仕事をして、家に帰ると夜な夜な勉強をする日々でした。
二級から始めて、一級建築士試験に合格するまでには3年かかりました。
独立後に妻も住宅収納スペシャリストや整理収納アドバイザーの資格を取るなどして、ふたりで家づくりに必要な知識を身に着けていきました。


随所に遊び心あふれるモデルハウス(売却済み)
新築とリフォーム・リノベの比率は?
現在は夫婦ふたりでやっているので、リフォームやリノベーションを中心に、新築は年に1棟ペースですが、今後は新築の注文住宅をコンスタントに建てていきたいと思っています。
こちらのご自宅兼オフィスもご自身でリフォームされたそうですね。
この家は築40年で、窓も小さくキッチンも不便でした。そこで、元の設計とはまったく別の場所にキッチンを新設したり、現在の事務所スペースを増築したり、大胆にリノベーションしました。キッチン台や棚などの家具も自分で造作しました。
自宅の困りごとを解決するために増築やリフォームを重ねた体験があったからこそ、お客様の気持ちがよく分かるんです。
モデルハウスとして使用している家は既に売約済みだとか。
そうなんです。もうじき引き渡し予定です。建てて半年ほどモデルハウスとしてイベントなどで使用して、1年以内に購入を希望される方と出会えました。
理想的なサイクルで売却できましたね。
本音を言うともう少し長く使いたかったという思いもありますが…。自分たちが建てたい家を建てて、それを買っていただけたので、また次に繋がると思います。

整理収納アドバイザーの妻、紀子さん
金山工務店の家づくりの強みを教えてください。
私が大工出身の建築士なので、設計から施工まで社長の私が一貫して行えることが最大の強みですね。現場で培ってきた技術と建築士としての知識を融合して、初回のヒアリングから設計・施工まですべて私が監修するので、分業制のハウスメーカーのように営業担当と現場の職人の言っていることが違うなんてことにはなりません。
夫婦ふたりでお客様からしっかりと本音を聞き出し、それがそのまま設計や現場に反映されるので、失敗しない家づくりができるんです。
環境保護のために実施している取り組みはありますか?
建てた後の経年変化も楽しんでいただきたいので、新築でもリフォームでもなるべく自然素材をたくさん使っているのですが、特に新築住宅では構造材までこだわって国産材を使うようにしています。国産材を使用することで、輸送にかかるエネルギーを削減することでCO₂の排出を抑える効果もあります。さらに地域経済にも貢献できます。
新住協(住宅性能の向上を目指す民間の研究機関)に加盟しており、設計面でもエネルギー効率を高めて環境負荷を軽減したり、再生可能エネルギーの導入を進めたたり、断熱性能の高い家づくりを実践しています。
パッシブデザインも取り入れられていますね。
パッシブデザインという言葉が独り歩きしていますが、実際には自然エネルギーを効率的に受動する家づくりは当たり前のことなんです。大切なのはそれをいかに意匠に落とし込むか、です。数値だけを追い求めるのではなく、周辺環境や景色を考慮して窓の位置を決めるなど、住む人が快適に暮らせることを第一に考えています。

設計コンペなどにも積極的に参加し、何度も表彰されている
今でも積極的にコンペや勉強会に参加されているようですが、その理由は?
家づくりに必要な知識は多岐に渡る上に、日々変化しています。
私たち工務店が自分自身をアップデートできずに古い知識で家を建ててしまえば、日本の未来に負債を残すことになってしまう。だからこそ、常にアンテナを張り、研鑽を重ね続けていきたいと思っています。

モデルハウスの前で / 純さん(右)と紀子さん(左)
木造住宅は今後どのように進化していくのでしょうか?
工業製品のように、3Dプリンターなどで作られた決まった形の家を決まった価格で買う住宅と、こだわり抜いた注文住宅の2極化が進むでしょうね。ただ、住宅は本来、地域の気候や風土に応じた設計をしなくてはいけません。これから家を建てる人にも、イニシャルコストだけにとらわれず、生涯を通じて住み続けることができる家として、安心や安全も含めたトータルコストで考えて家づくりをしていただきたいですね。
近木協に期待することは?
まずは地域の工務店の存続に貢献していただきたいですね。
近木協の会員さんには材木店や製材所も多いようなので、そのネットワークを活かして、国産材の利用を促進しつつ、山から一気通貫で木材を製品化できるような仕組みを実現してほしいです。ドイツのように山の林道を整備すれば輸送コストも削減できるし、森林を守りながら無駄な濫伐を防ぐこともできる。世界でも有数の森林率を誇る日本の山を守っていきましょう。