御社の略歴を教えてください。
2022年で起業して2期目になります。
起業前も住宅業界にいたのですが、一社員だったので決められた図面で言われた通りに動くという働き方しかできず、もっと自分なりにお施主様に寄り添った家づくりをしたいと思ったのが独立のきっかけとなりました。
堺市で開業された理由は?
私は生まれも育ちも泉北で、この地域から出たことがないので、他の地域で起業するという選択肢はありませんでした。
新築とリフォームの比率は?
堺市を含む泉北エリアはニュータウンなので移住してくる方が多く、高度経済成長期に街づくりが始まってから半世紀が経ち、当初の移住組は二代目でも40〜50代が中心なんです。そのため、新築よりは建て替えやリフォーム需要の方が多いのが現状です。
アンケートにも細かく回答してれた乾社長
御社の強みやこだわりのポイントを教えてください。
「ONLY ONEである」ということです。大手ハウスメーカーとの差別化のためにも、ありきたりなことや既製品で収まるようなことはせず、お施主様としっかり話しながら一から作っていくことにこだわっています。
家具などもすべてオリジナルの造作です。お施主様とお話ししたイメージを大工さんに伝え、木の形や色などを実際に見ていただき、お気に入りの1枚を見つけてもらうところから始めています。
現在は乾社長おひとりでの経営とのことですが、すべての業務をご自身でされているのですか?
はい、私ひとりですべて対応しています。大変ですが、それが強みでもありますね。リフォームが多いということもあり、お客様のご要望を直接聞いて現場に反映することが何より大切なので、商談から現場管理まで、一貫体制で行っています。
家が完成すると1棟づつ写真集を作っている
グリーン化事業の申請の実績は?
乾工務店は新築の比率が少ないのでまだ一棟だけです。長期優良仕様にしたいという方にグリーン化も提案するようにしています。
グリーン化事業を通して、どのような環境対策を意識されていますか?
家づくりに関して言うと、パッケージ化された構法などには頼らず、現場の大工さんと一緒に環境に適した無理のない施工をしています。そのため、断熱性能などの数値にもとても自信があります。
現代の家づくりは効率化して現場で考えなくても家が建つようになってしまったので、楽になった分、家ごとに最適な性能値を出すことが難しくなりましたが、本来の家づくりというのは、設計の段階でしっかり現地の方角を見て、西風が吹くから窓をとり、西日が強ければ屋根で対策をするなど、環境との調和を考えて建てるというのが当たり前なんです。昔は大工さんが現場ですべて考えていたのですが、今は工業化されていますからね。
なぜそのような工業化が進んだのでしょうか?
おそらくコストカットに原因があるように思います。工業化すればコストカットはできるかもしれませんが、その代わりに必要な部分もカットしなければいけなくなり、お客様と向き合う時間が減ることで、自ずと環境に合った家づくりができなくなってしまいます。
コストカットのメリットとデメリットをきちんと説明すれば、むしろ好意的に理解してくださるお客様がほとんどです。
今後住宅業界はどうなっていくと思いますか?
地場の工務店は、効率重視のローコスト住宅と、機能性重視の高性能住宅の二極化が進んでいますが、市場全体では工業化と高性能を両立できる大手ハウスメーカーが圧倒的に強く、その中で工務店がどのように生き残っていくかが課題です。
工務店の建てる家でも高い性能が求められるのでしょうか?
実は日本の家は世界に比べて性能評価ランクが低いんです。例えば、緯度の高い韓国では高断熱の樹脂サッシが一般的ですが、日本で同じものを使いたくてもなかなか手が出せる価格ではありません。寒さの問題だけではなく、韓国は紫外線が強く建物の劣化が早いため、全体的に基準値が高く設定されているそうです。
ただし、日本は地震が多いので、耐震性能については世界基準で見ても劣っていないと思います。2025年の法改正で建築基準法の四号特例が縮小される予定なので、これまで構造計算が免除されていた木造住宅でも一定の耐震性能が義務化され、全体的に高性能化していくと思います。
※建築基準法四号特例:特定の条件下で建築確認の審査を一部省略する規定
堺市にある事務所兼工場にて
近木協はどのような組織ですか?
私は実は前職の時に声をかけていただき、その頃から理事をやらせてもらっているのですが、一般の工務店が理事をして運営ができるというのは、この種の団体では近木協ぐらいではないでしょうか。私のような若い世代の声が反映されるのは嬉しいですね。グリーン化事業の申請の情報がまとまっているのもありがたいです。
今後の近木協の課題を教えてください。
近木協のもっと若い世代の会員の方々が前面に出ていただければ、より幅広い交流が増え、活気づくことを願っています。
新型コロナ以前はゴルフや森林ツアーなど会員で集まってイベントを開催していましたが、今は総会やセミナーでしか交流ができない状況です。中小企業同士だからこそ、横のつながりを作ったり情報交換をしたりすることが大切だと思うので、様子を見ながらまた皆で集まれる機会を増やしていきたいです。